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鍵のかかった庭

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10年分の庭の美しい瞬間と
庭から生まれた言葉。

新刊「鍵のかかった庭」
初回ポストカード付き

その家族は黙って
どうロマンティックに
現実にあがらったか。

本でその残像に鍵をかけ
永遠の秘密にした。

手のひらに
いつも光と風の庭を。


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庭は、幸せと似ていて
あると思えばあるし
ないと思えばない。

生きるうえで大事なのは
実際のありなしより
眠る時のまぶたの残像で
そこに豊かな庭が広がれば
その庭はある。

この本の庭が
どんな闇の奥底でも
豊かにまぶたに
ひろがりますように。


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庭は季節によって、さらに一刻一刻表情がちがう。一瞬の良い瞬間が多々ある。時より庭に来ていただいて、もどかしいのは、すべてを見ていただけないこと。この本は、その良い瞬間を10年分の中から選んで一冊にした。本はこうゆうことができる。

さらに、この10年は親が急に老いて行く10年だった。写真を見返しながら、それを受け止めた。しかし、どうだろう、この庭は。わたしの表現の核にある、生命力とロマンティズム、は、ずっと一緒にいる庭から教えられた。つまり庭をつくってきた両親から。


「鍵のかかった庭」
A5サイズ、144ページ


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note



庭は40年ほど両親がつくっていて、本格的に手伝いはじめたのは、この10年くらい。それまでは当たり前すぎて、あまり意識していなかった。SNSに庭の写真を載せて反響があることで、庭に意識がゆき、さらに、ハードな出来事がいくつかあり、庭に救われるようになった。

生と死のサイクルを身体に感じ、土に根ざして暮らすこと。社会が入ってこれない秘密の内面を持つこと。年齢を重ね、いろいろな目にあい、喉が渇き身体が水を求めるように、庭を植物を切実に求めるようになった。

もうひとつ庭に興味が深まったのは、庭づくりの新しい価値観に出会ったこと。おそらくこの20年くらいで、日本の世の中的に庭づくりの概念がすこし変わった気がする。ターシャテューダーの影響も大きい。それまでのちいさな花壇のブロックごとに花を植えるような近視眼的で、いわるゆる園芸的なものに対して、敷地を俯瞰で見てパレットのように風景を描く、メドウ(草原)や野原のような庭づくりには、とても興味がわいた。

たぶん、幼少期に育ったやまなしの祖父母の庭がそんな庭だった。祖父が画家だったことも要因かな。また、うたをつくるとき、たびたび思うは、イギリスの草原のような風景だったするので、遺伝子の記憶でもあるのかもしれない。そういう意味では、興味より、回帰かもしれない。

海外からいくつか庭師の本も取り寄せた。特にダンピアソンは、大好き。庭づくりを決定的にやりたくなったきっかけは、両親をつれてまわった北海道ガーデン街道めぐりだった。上野ファーム、紫竹ガーデン、十勝千年の森、真鍋庭園、六花の森、十勝ヒルズ、大雪森のガーデン、風のガーデン、8つのそれまでにない、風景をつくるガーデン、を目の当たりにした。

帰っていくつか庭づくりを変えた。

常緑で庭の見栄えづくりには便利だが、風景を分断させてしまうこんもりとしたツツジを大量に間引き、風景を連続させた。父が成功させていた、春から初夏のノースポールの面積を増やすため、土を新たに掘り返し、一面の野原を目指した。さらに、俯瞰でみたときの花の色味をしぼり、繊細な色味のものを探した。

市場でなく普通のひとが買える苗や種の種類もこの10年くらいで、ビィオラやチューリップなどより繊細なものが増えた。

本にしたこの10年は、いろいろなことが重なり、結果的に最高のかたちになった10年だった。共稼ぎだった両親が定年退職し、さらに庭に打ち込め、より手が入れられたもこの10年だった。

庭自慢になってないかという懸念はいつもある。ただ、両親も老い、自分も歳を重ね、相続税の問題もあり、いつまで維持できるか、という喪失の恐怖ともいつも一緒。

だから、写真に捉えて、本にした。大切なもの、いつまであるかわからないものを、恐怖と感謝をもって切実な気持ちで本にした。庭というより、家族や自分の年月を集約した。だから、この本は異様な濃度がある。付け焼き刃ではできないことだけが詰まっている。

庭の日常的な手入れ、花、枝の間引き、草取り、消毒、水やり、伸びるつたに合わせて支柱への紐の巻き位置を変えるなどは、ほぼ両親がやっているのでわたしはうしろめたい気持ちで写真を撮り、文章を書いている。でも、この距離が、この焦燥が、写真と文章の濃度を上げている気もしている。どっぷり庭師になっていたら、たぶん、写真も文章も必要としていない。

鍵のかかった、というタイトルの意味はふたつ。鍵をかけて永遠に大切にすること。そして、ハードな現実にとりくむために、社会が入ってこれない鍵のかかった秘密の内面を持つこと。

わたしはおそらく多くのものを失っても、すこしの花を生けると思う。ごく自然に。救いのように。

この本を受け取っていただける方にとって、この本が、秘密の内面になりますように。それを、眠る前に、病院の待合室で、静かな休日のカフェで、どこでも開いて、その中ですごせますように。本の中ではいつでも光がうつろい、四季がうつろっています。変わることなくみずみずしく。

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